中澤 楓 TEXTILE EXHIBITION "KILIG"展覧会に向けた思い
- Casa de pano
- 4 日前
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取材・文:Casa de paño

鎌倉・雪ノ下のテキスタイル研究所「Casa de paño」にて、2025年5月2日~4日に開催される中澤楓さんの展覧会「KILIG」。中澤さんがテキスタイルの道を志したきっかけや、本展で発表する新作生地の制作過程についてお伺いしました。
平面と立体、デジタルとアナログ。両面性が混在するテキスタイルに惹かれて
ー2022年に多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻卒業後、同研究室にて副手として従事しながら、テキスタイルの制作を続けてきた中澤さん。この春独立し、本格的に作家としての活動がスタートしますね。テキスタイルを極めようと思ったきっかけは?
中澤:もともと幼少期から絵を描くことが大好きだったのですが、予備校に通う中で、色を扱うこと自体が好きだと気づきました。高校の美術の先生がテキスタイルご出身だったり、予備校の先生に「楓ちゃんはテキスタイルがあっていそうだから調べてみたら?」と勧めてもらったことが、テキスタイルデザインを志したきっかけです。
テキスタイルについて興味を深めるうちに、平面と立体、デジタルとアナログの両面性が混在する独自の魅力にどんどん惹かれていきました。

ー中澤さんの作品は、身近なお花や植物がモチーフとなっており、とても華やかで眺めていると明るい気持ちになります。生地のデザインはどのようなところから着想を得ていますか?
毎日の生活で感じたルンルン、ワクワクとした気持ちから着想を得ています。例えば、日向ぼっこしているハト、季節の変わり目を教えてくれる植物、美味しい料理と出会ったときなど。生き生きとしたデザインを描くことを大切にしています。

ードローイングファイルを拝見すると、様々な手法を探求している様子がひしひしと伝わってきます。
大学時代に、「少し不完全さを残した方が長く愛されるデザインになる」とご指導いただいたことがきっかけで、貼り絵や切り絵など、様々な手法でドローイングをするようになりました。
本展“KILIG”のために作成したカーネーション柄のテキスタイルも、切り貼りすることで原画を制作しています。花びらを表現するために、ひたすらぐるぐるを描いては切り、貼り絵で花のかたちを作りました。

本展でも展示するテキスタイル「へびいちご」の原画は、アクリルガッシュで描いたモチーフにハサミを入れ、切り貼りすることで制作しています。ハサミを入れることで生まれる特有のカットラインで背景をかたちづくり、リピートに動きを持たせました。

ー中澤さんの生地は布に筆でダイナミックに描いたような印象があります。色のグラデーションをシルクスクリーンでどのように表現しているのでしょうか?
中澤:複数の版を重ねることによって筆跡をシルクスクリーンプリントで表現しています。原画のデータから、筆跡の濃くなっている部分を抽出し、細かい点としてプリントしています。
ドローイングの勢いをテキスタイルに残すために、絵の具で描いたような筆跡をシルクスクリーンプリントで表現したくて、何度も研究を重ねました。ぜひ実際に布を近くでご覧いただけたら嬉しいです。

原画の再現か表現か
ーテキスタイル制作以外にも、イラストレーションのお仕事やリソグラフ印刷でのzine作り、陶芸など活動の幅を広げる中澤さん。テキスタイル以外の表現にも挑戦することで見えてきたことはありますか?
中澤:それぞれの素材に、それぞれの良さと不自由さがあります。どのように活用していくかを考えながら制作していくことに、魅力があると思います。
2024年は「色んな技法に触れる年」と決めて、リソグラフや陶芸など色々なワークショップに参加しました。様々技法に触れたことで、「他の素材で表現したいな」と考えたときに、以前よりも素材との相性をよりリアルなものとして考えられるようになったと感じています。

中でも、夏に参加したリソグラフのワークショップが思考のターニングポイントになりました。「リソグラフは“再現”か“表現”か、どちらだと思いますか?」と聞かれたんです。そのとき、学生時代に教授に言われた「原画は原画、布は布だから」という言葉を、ふと思い出しました。何年かのときを経て、自分の中の言葉にできなかった感情が、線で繋がった気がしたんです。テキスタイルに限らず、作品のいちばん魅せたい部分と素材の相性を考えることが大切であって、原画の再現性に強くとらわれる必要は全くないのだと。

ー会場は、生花と布に包まれた柔らかな空間になりそうですね。来場者の方にはどのように楽しんでいただきたいですか?
中澤:会場の天井高を生かし、テキスタイルを中心に植物園をイメージした構成となっています。アイデアドローイングや原画、立体作品なども一緒に展示します。植物園の中にいるような感覚で、空間自体も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ー最後に、今回の展示に向けた制作への想いや今後の抱負をお聞かせください。
中澤:好奇心を追求する過程に、人や環境との出会いがあると日々感じています。
「せっかく自身の作品に出会っていただいたからには、少しでも楽しい気持ちになっていただきたい!」という思いで制作しています。人との関わりを大切にする作家になりたいという想いが根底にあります。本展でも、来場いただく皆さんとルンルンとした楽しい気持ちを共有できたら嬉しいです。

中澤 楓 / テキスタイルデザイナー
1999年、神奈川県生まれ。
2022年に多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻卒業後、同研究室にて副手として3年間従事。日常に溢れるちょっとした幸せや、ルンルンとした気分になれるようなテキスタイルデザイン、イラストレーションを大切にしながら、作家活動を続ける。
instagram: @nakazawa_kaede
<開催概要>
『KILIG』 中澤楓 TEXITILE EXHIBITION
会期:2025年5月2日(金)- 5月4日(日)
営業時間:11:00 – 16:00
会場/企画協力:テキスタイル研究所 Casa de paño
入場料:無料
事前予約制を取らせせていただいております。
下記の予約ボタンよりお申込み後、受付メールにて所在地をご連絡いたします。
<ご予約時の注意事項>
*代表者様のみで一枠お申し込みください。 混雑を避ける為、1枠最大5名様(子供含む)迄でお願いいたします。
*当日1時間前まで、予約フォームより受付が可能です。
*日時変更およびキャンセルは、前日までにcontactフォームorメールにてご連絡お願いたします。
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